クラークの教示

この間瀬名秀明先生の講演に行って来ました。作品の解釈のためになったので、そろそろ感想をまとめていこうと思います。

希望 (ハヤカワ文庫JA)

希望 (ハヤカワ文庫JA)

雑感から言えば、傑作だと思います。瀬名先生を読み始めたのは逆奏コンツェルトのFor a breath I tarryから。その時はそこまで気に止めてなかったのですが、NOVAで載った希望からイーガン的なものを感じてからです。なのでかなり最近から入った口なんです。よくパラサイト・イヴなどの作品からのファンからは難解になったとかネガティブな意見を聞きますが、私にはよくわからない話です。
伊藤計劃後のSFの最先端に立つものと言われますが、それは伊達ではなく斬りつけるメッセージにリリカルな描写は魅力たっぷりに語りかけて来ます。

さて、中身に入りましょうか。

・魔法
義手のマジシャンのお話です。工学ひいては科学と魔法の関係のお話。

充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。

とはクラークの言葉。マジックは科学ではないが、それはもっと純粋な技術をもって魅せる魔法であることは当然ではあります。それと結びつけて工学が立派に魔法になるというのは、偶然という名の魔法をスパイスにして書いた作品。私は情報屋ですが励みになりました。
フォロワーの方にマジックは大道芸のジャンルだと教わりましたが、枠を広げても同じですよね。観る側にとっては大道芸もチチンプイプイやアブラカタブラと何にも変わらない。まして過程が細やかなのだから。そう考えると我々はなんと無粋なもので、ボタンひとつで終わってしまう。インスタントな魔法。少し寂しいですね。

うん、この調子だとかなり長くなりそうですね。幾つかにわけましょう。