アントとシニノム

風化しないうちに書いておきましょう。

さきほどみた映画の「聖家族 大和路」の感想。ネタバレありです。




そもそも私は原作の堀辰雄のファンなのですが、この聖家族は手に入らなくて読んでません。大和路は持っていますが、紀行文なのであまり記憶にない。ほぼ予備知識無しで見ました。


巨匠の画家九鬼の死により弟子の河野は絵が書けなくなってしまう。新たな発想を求め奈良へ旅立つ。しかし、デカダンな思想を持つ河野に生き生きとした絵は書けそうになく出戻りしてしまった。自暴自棄になり場末のバーで呑んだくれている所に、現れたダンスユニット。その内の一人は、正にいきいきと活力をもって目の前に自分を表現しようとしている。


と雑句把覧にご紹介。
全体的な感想としては、掘り下げ不足な感は否めないがファンにとっては十分かな。しかし、それは脚本の話で映像としての構図や演技音響なんかは評価はできないところ。

河野役のラーメンズ片桐は、演技指導の結果だろうか。あまり感情を出さないで棒読み気味。どの人物も大げさな演技をしているので、これはこういう方針なのではないかと思う。
ちょっと、気になったのが九鬼の娘絹子がバラを買った直後人にぶつかって花束を取り落としてしまうシーン。花屋のおばあさんが目の前にいるのだけど、絹子をガン無視。いやいや、声くらいかけろよ。後につながるのに不自然だけど、せめてカット入れて場面転換してください。あと、この監督は時代背景にもっと気を使うべき。前作の斜陽もそうだけど、明らかに時代的におかしくねってとこがある。
音響も古都奈良の仏閣にエレクトロっぽい曲を合わせようとした意欲は買うけど失敗気味。



貶しているけど褒めるところもちゃんとあって、話の流れってのは堀辰雄らしさがあるなと感心している。なるべく原作よりにつくったんだろうね。台詞は割と凝っていると感じた。

河野はダンスユニットの沙羅とお付き合いをした。しかし、絹子の婚約者としても白羽の矢が立っていたのだ。ある日、絵の書けない河野は嫌気がさし沙羅と街出て行くことを決意する。絹子にそれを報告にいったあと母が「絹子さびしいの」と聞いた後の台詞。

「いいえ、あのネクタイがあまりに派手すぎて目が痛くなってしまったの」

ここはすごくグッと来た。壊れそうなほど繊細な台詞回し。それだけで満足です。

中身の考察は原作読んでからにしようかと思いますが、まとまったら書くかも。