めぐる宝石

最近更新がなかったのは、普通に忙しかったからです。一週間に書く量じゃないレポートを書いてました。あのさ、いまさら機械語でプログラムさせるとかマゾなのって言いたくなるよね。

さておき。部会用に読んだこちら

アーシュラ・K・ル・グィンのロカノンの世界。SFの女王と言われるくらいの有名な人ですが、世間にはゲド戦記の作者としてのほうがなじみあるでしょうね。ゲド戦記は紛れもないファンタジーなので、この人は根幹にはファンタジーがあります。それをSF風に味付けするのがこの人。イーガンみたいなSF読みたい人には向かないよね。

この作品もファンタジーです。民俗学者であるロカノンが文明が存在する惑星に調査をしにいくという筋です。最初は、惑星についてのデータがざらっと出してくるので、ファンタジー世界をSF的な解釈をもって表現する物語だと思っていたらそんなことなかった。なのでSFではなくファンタジーとして読むべきです。

そう思えば、世界観の構築は非常に繊細でよく出来たものだと思います。しかしですね。ファンタジーに冒険活劇を求める人にはお勧めできません。あくまで淡々と出来事が描かれているのがこの小説です。心情描写は最低限で、世界観を描くことに終始している。そして善なるものが悪を倒すといった爽快感あふれるものではない。そのには何かしらのメッセージがあって単純なものではなくなっている。この人の凄いところは世界観自体にメッセージを込められることだと思います。そのなかで何がどう動こうと関係の無い一貫したもの。そこらへんを読み取るのが一番楽しいかもしれません。

あと、オチのつけ方が上手だと思います。生臭い話から、寓話的な話に持って行っている。ロカノンと宝石。物語の中では意味をなさない挿話が、ラストになって一挙明らかになる。単純ですが上手い見せ方です。