身を捧げ尽くす心

さて、戻っていきましょうか。

今回も映像作品でこちら

ヴィヨンの妻 桜桃と蒲公英です。
これはなかなか難しいですよね。太宰ファンなら、これは!って思うのですがヴィヨンの妻なにそれ?な人はどう感じるかは保証できないというところですか。それというのも「ヴィヨンの妻」「桜桃」という原作があるのは大いに予想がつくのですが「きりぎりす」「姥捨」「燈籠」あたりの話も入っていたりします。それもちらっとではなく流れの一つとしてね。割と読んでる太宰ファンならなるほどそうきたかと展開を楽しめる人ですが、映画だけの人はちと辛いのではないかな。確かに、映画化されるときヴィヨンの妻って短編だけど大丈夫かなと思いましたが、他の短編まで一緒くたにしてしまうとは予想外でしたよ。そういう意味では私は楽しめましたが人には勧めづらいのが悲しいですね。

基本的には女性の強さを書いた話です。辛い世の中で生きていかなくてはいけない。劇中の言葉を出すと「男には不幸だけがある」「女には幸福も不幸もない」なかで、「生きていればいいじゃない」と言える女性の強さってのがヴィヨンの妻の面白さです。それが他の作品が合わさったことによって違った印象を受けます。主人公のさっちゃんは夫の大谷の尻ぬぐいを延々とし続けるのですが、原作だと健気で終わるのですが映画だと狡猾さが目立ちます。これは何をしてでも夫添い遂げる、また生き続けるというメッセージを強調しているとも言えるはず。そう考えると原作からの拡張を思えるのですが若干違和感があったりするのですよね。調べたら他にこう思っている人もいるらしい。なぜかはよくわからないのですがね。狡猾さなら対比する役がちゃんといるのだけど。

俳優もかなりいいとこ使っていて主役級さっちゃんが松嶋菜々子、大谷が浅野忠信。ほか堤真一妻夫木聡広末涼子室井滋などなど。広末涼子なんかがはまり役で、妻でさっちゃんを出し抜いて大谷と心中する女給役なんですが、いやらしいことこのうえない。結局、心中は未遂になり大谷は拘置所入りになるです。そこで拘置所に向かう松嶋菜々子広末涼子がすれ違うシーンがあるのですが、この時の広末の笑顔。いやもう、くそやろって思うほどイラッときます。いい意味で。
ちょっと別なところに目を向けると男性陣がみんなそろってダメ男ってところも太宰らしくて。絵に書いたようなダメ男の浅野。金と地位しかなく自分の人生に後悔しはじめている堤。松嶋を引き止め幸せにするという役を貰うがびびってなにもしない妻夫木という3人のダメ男。みんないい味だして演技してます。

というところで太宰ファンには是非とおすすめしますが、それ以外の人には見てほしいなくらいで。もしかしたか切っ掛けにはいいかもしれないですね。