100周年!!

なにが?と思ったそこの貴方。正解です。別に今年が100周年じゃありません。ぶっちゃけ102周年です。私が敬愛する太宰治生誕102周年です。1909年誕生から生きていれば今年で102歳。そんな彼のお誕生日を祝ってか。太宰治原作のコミック、映画、ノベルスが作られました。今回からその作品達を取り上げていきたいかと思われます。

本当は100周年の時からあっためていたもので、ようやくほぼ全ての作品を観ることが出来たのでようやく陽の目を見ることになりました。

それでは第一作目はこちらで。

人間失格 1 (BUNCH COMICS)

人間失格 1 (BUNCH COMICS)

人間失格 2 (BUNCH COMICS)

人間失格 2 (BUNCH COMICS)

古屋兎丸がコミカライズする太宰治です。しかも誰でも一度は聞いたことがあるだろう人間失格を、です。まだ未完なのですが、評価するには十分なのでご紹介してしまいます。

この作品の一番の売りが現代版人間失格というところ。これはこれで安直すぎるって意見はあるでしょうが、現代になぞらえてリメイクするというのはとても難しいこと。戦争の影が落ちる社会、方や科学という人工物で照らされる社会。生きている社会がまるっきり違いますからね。この差をどう違和感なく埋められるかというのが壁なんだと考えています。

で。この作品はどうであるかと聞かれば。申し分ないです。と答える他がありません。壁を上手く乗り越えて、無理のないかたちにすっきりと収まっている。具体的に挙げていきましょう。


さあ、少し筋を話しながら行きます。まず、人間失格の冒頭は主人公の葉蔵の写真を見たある人の視点で始まる。古屋版ではこの人物が古屋自身となっています。ある時、古屋がネットサーフィンをしているところ、掲示板で痛いサイトがあると話題になっているのを見つける。興味本位にアクセスした先に辿りつくのが葉蔵のサイトであるという感じです。そこに手記を見るという形で物語が進行していきます。

これは、もうありそうではなくありますよね。こういった光景って。結局現代に還元されてしまうと痛いになってしまうのは悲しい気持ちではありますが、わからなくもない話です。現代としては避けて通れないPCやネットそういうものを無視しない(出来ないが本音)のは偉いところです。

時代に関することについては他にもありまして。葉蔵は悪友の堀木と遊び歩くは同じです。その遊びというのも現代風になっていて女遊びでもヘルスになっている。しかもデリヘルまでこなすところがまたなんとも憎いものです。もう一個、社会活動から抜け出し葉蔵が志すのがネットで物書きをして食っていくというところ。これも、現代人みたいな発想してんなって想いませんか。

といった感じでほんの一部。現代版にちゃんとなっているよ。というアピールをしました。それを踏まえて人間失格としてはどうなのか。漫画としてはどうなのかにつっこんでいきます。

人間失格というのは葉蔵の裏切り裏切られ歪んだその精神を丁寧なつくりで書いた作品です。古屋という漫画家はいまでこそジャンプSQに連載を持っていたりしますが、本来は丸尾末広のようなオドロオドロしい描写を得意としています。加え人気のでた幻覚ピカソも人間の精神を絵として表すという題材です。これはもう鬼に金棒。その不気味さが繊細な人間の心情を上手く描写しています。ちゃんと漫画化にするにあたって漫画にしかできない視覚的なシンボルというのもしっかりと利用しているのも流石といったところです。

鎌倉心中で一緒に入水する恒子はキャバ嬢として書かれています。そして其の源氏名がアゲハ。手にもアゲハ蝶のタトゥーが入っている。その手のアゲハ蝶が…。海から助けだされた葉蔵ですが、同時にアゲハも水から挙げられていた。そこで葉蔵が見るものは。

なんて、引きをつくってみたりして。そこに込められた意味も心象もマーベラスと口に出すほどよく出来たものであること請け合いです。


最後に締めを。この漫画をまとめるとこうなります。あるべき形をして生まれた現代の人間失格。原作を踏襲しつつ、人間失格の方に嵌めたファン満足の一冊です。ところにより目新しさがないという意見もあるかなとは思います。それはそれで認めるべき所ではあります。でも、なるべく純粋に抽出するもの大事かなと。結局作者が何を言いたいかは完結してから語るべきですので今回はあくまで紹介ね。

PS.コメントしようとしたら認証できなかったらしいので、設定みたところちゃんとスパム!(ベーコン!スパム!)以外は書き込めるようになってました。そもそも認証を必要としないはずなのですがね。私のほうで書き込みは成功していますん。